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動脈硬化の最大のリスク
脂質異常を改善する生活術

血中脂質が高め(脂質異常)でも自覚症状はありませんが、何も対策を講じずにいると、知らぬ間に動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因に。健診結果が悪化してきたら、早めに生活習慣を見直しましょう。

脂質異常とは、血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が必要以上に多いか、またはHDL(善玉)コレステロールが少なすぎる状態です。
この3つのうち、最も動脈硬化を進めるのがLDLコレステロールの高値です。LDLコレステロールが増えすぎると、血管壁の間に潜り込み、ドロドロした塊(プラーク)を形成し、血液の通る隙間を狭めて動脈硬化を助長します。必要な酸素や栄養素が届かなくなるばかりか、進行するとプラークの表面が破け、血栓となって血管を塞ぎ、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。
一方、HDLコレステロールには、余ったLDLコレステロールを回収し、動脈硬化を抑制する働きがあります。
中性脂肪が増えすぎると、HDLコレステロールが減少し、“超悪玉”といわれる小型化したLDLコレステロールの増加を招きます。この超悪玉は、小さいため血管壁に入り込みやすく、動脈硬化のリスクが一段と高まります。
血中脂質は生活習慣の影響を強く受けるため、数値の悪化がみられた人は早めの対策で動脈硬化の進行を防ぎましょう!

 

GOOD! 今日からできる改善法

  • 改善法1  「脂」を控え、食べすぎない

    脂質異常の原因としてまず、「脂(飽和脂肪酸)」のとりすぎ、食べすぎが挙げられます。脂質異常の予防・改善には、血栓を予防して血液をサラサラにする効果があるDHAやEPAなどの「油(不飽和脂肪酸)」や、コレステロールの排出を促す食物繊維の摂取が効果的です。

     

    -おすすめ改善法-

    ✖控えよう!

    飽和脂肪酸

    肉の脂(バラ肉、ひき肉、鶏肉の皮などを含む)、バター、生クリーム、ココナッツオイル、パーム油、カップラーメンなどの加工食品

    コレステロール

    鶏卵、魚卵、レバー、ケーキ、クッキー、アイスクリーム

     

    ◎積極的に取り入れよう!

    不飽和脂肪酸

    さばやさんまなどの青魚、ナッツ類、オリーブオイル

     

    食物繊維の多い食品

    野菜やきのこ、海藻、大豆製品、オートミール、玄米

     

     

  • 改善法2 間食や夜食、飲酒の機会を減らす

    糖質やアルコールは中性脂肪を増やす原因に。また、エネルギー消費量が少なくなる夜間は、食べたものが中性脂肪になりやすくなります。

     

    -おすすめ改善法-
    ✅ 1日3回の栄養バランスの整った食事を心がける
    ✅ 菓子類や甘い飲み物は頻度や量を減らし、どうしても間食をとりたい場合はナッツやオートミールを少量食べる
    ✅ アルコールを飲む機会を減らす、量を見直す
    ✅ 夜食を控える

  • 改善法3 たくさん歩く

    ウオーキングや水泳、ジョギングなどの有酸素運動には、中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やす効果があり、習慣にすると脂質異常の予防・改善効果が期待できます。1日の歩数が多いほど、HDLコレステロール値が高いというデータもあるので、積極的に体を動かしましょう。

     

    -おすすめ改善法-
    ✅ エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う
    ✅ 通勤や買い物、家事などで歩く時間を増やす
    ✅ 1日30分(10分×3回でもOK)・週3日の運動を目標に
    ✅ 歩くときは軽く汗ばむ程度の速さを目安に

  • 改善法4 ストレスをためすぎない、十分な睡眠時間を確保

    ストレスがかかったり寝不足になったりすると交感神経が刺激され、血中脂質上昇作用のあるホルモンが分泌されます。必要な睡眠時間には年齢差や個人差がありますが、下記の寝不足のサインがあれば、就寝時間を見直しましょう。

    ●寝不足のサイン●
    □ 日中眠くなる、頭がぼーっとする
    □ 休日は平日よりもだいぶ長く寝てしまう
    □ ベッドに入ると5分以内に眠れる
    □ 些細なことでイライラする

     

    -おすすめ改善法-
    ✅ ストレスをためすぎないように適度に休憩や休養をとる
    ✅ 瞑想や趣味など、自分に合ったストレス解消法を実践する
    ✅ 寝不足のサインが出たら、就寝時間を15分早めてみる

中性脂肪の特定保健指導判定項目に随時(非空腹時)が追加されます

特定健診の結果、腹囲やBMI が基準値を超え、脂質・血糖・血圧リスクが高いと、メタボリックシンドロームまたはその予備群となり、特定保健指導の対象になります。
2024年度から始まる「第4期特定健診・特定保健指導」では、中性脂肪の特定保健指導判定項目に現在の「空腹時(150mg/dL)」に加え、「随時(非空腹時、175mg/dL)」が新たに追加されます。
中性脂肪値は食事の影響を受けやすく、たとえ空腹時の値が低くても、食後の値が高ければ心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まることがわかってきたことから、新たに項目が追加されることになりました。

監修 慈恵医大晴海トリトンクリニック所長 横山 啓太郎

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