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これからの女性の健康管理術

ひどい月経トラブルに悩んでいます

月経が近づくと、体がむくんだり便秘になったり、ささいなことでイライラします…。月経が始まると下腹部痛や頭痛がひどくて鎮痛剤が欠かせません。仕事や日常生活にも支障が出て困っているのですが、こんなことで病院に行っていいのでしょうか?
(30代・女性)

  • 月経による不調は我慢しない

    女性の中には、PMSや月経困難症を「当たり前のもの」「我慢するもの」と思っている人もいるのでは? しかし、鎮痛剤がないと耐えられないほどの痛みがある状態は、けっして正常とはいえません。「こんなこと」などと思わず、一度婦人科を受診し病気を疑ったり治療を受けたりする必要があると考えましょう。
    ●月経前症候群(PMS)…月経の1週間程前から始まる身体的・精神的な不調のこと
    ●月経困難症…強い下腹部痛や腰痛、頭痛などの月経症状により日常生活に支障をきたすこと

  • 企業経営への影響も明らかに

    月経は、妊娠を望んでいるタイミングでは必要なものですがそうでないときは体にとって大きな負担です。現代の女性は昔の女性に比べて生涯月経の回数が増加しており、子宮周辺が病気にさらされるリスクも高まっています。
    また、近年は企業経営への影響も明らかになっています。月経トラブルによる不調は、病欠(アブセンティーズム)だけでなく、出勤していても生産性が低下した状態(プレゼンティーイズム)を招き、年間で約4,911億円の労働損失をもたらすと試算されています。
    ※出典:経済産業省 ヘルスケア産業課「健康経営における女性の健康の取り組みについて」(平成31年3月)

  • 大きな病気が隠れている可能性もあり

    生活に支障が出るほどの月経トラブルがある場合、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因となっている可能性があります。子宮内膜症と診断された方の多くはひどい月経痛の症状があります。これらは不妊の原因にもなりうるため、早期から予防・治療をすることが重要です。
    また、月経以外での不正出血も子宮や膣の病気が隠れている場合もあります。手帳やアプリにご自身の月経周期を記録しておくと、不正出血の発見に役立ちます。
    ●子宮筋腫…子宮筋層に発生する良性の腫瘍
    ●子宮内膜症…子宮の内膜に似た組織が、本来あるはずの子宮の内側以外の場所にできてしまう疾患
    月経にまつわる痛みや不調は人と比べる機会が少ないため「みんなこんなものだろう」と思いがちです。しかし、症状には個人差がありますので、ご自身がつらいと感じたらぜひ婦人科へ相談してください。

  • 低用量ピルなどで治療が可能

    治療には、鎮痛剤以外にも低用量ピルが有効です。低用量ピルには「避妊薬」のイメージがあるかもしれませんが、れっきとした月経困難症の治療方法の一つです。適切に服用することで、月経痛や出血量を軽減し不調を和らげることができます。
    月経困難症の治療を目的とした低用量ピル(LEP)は、健康保険が適用されます。継続的な服用が必要になりますが、ジェネリック医薬品にすれば費用を抑えることが可能です。月経トラブルに悩まされている方は、一度信頼できる医師から説明を受け、服用を検討してみてください。

監修:丸の内の森レディースクリニック 院長/医学博士 宋 美玄(そん みひょん)

現代女性の健康管理は女性ホルモンがカギ

女性の健康状態は、生涯を通して女性ホルモン(エストロゲン)の変動に影響を受けるといっても過言ではありません。ライフステージごとの女性ホルモンの変化を知り、これからの健康管理に役立てましょう。

  • 女性ホルモンの働き

    女性ホルモン(エストロゲン)は主に卵巣から分泌されます。子宮内膜の増殖、乳腺の発達、皮膚にハリや潤いをもたせる、骨からのカルシウム流失を防ぐ、コレステロールを改善する、血管をしなやかにするなどの作用があります。

  • 健康との関係

    女性ホルモンの分泌量は生涯を通して大きく変化し、それに伴ってさまざまな体の変化や健康問題が生じます(下図参照)。したがって、女性ホルモンの変化を理解することで、これから先に起こる不調や疾病に備えることが可能です。気になる症状があれば早めに婦人科を受診し、必要な治療を受けることが将来的な健康状態・QOLの向上につながります。
    ※Quality Of Life(生活の質)の略

女性の就業率の上昇などで女性の健康問題は多様化しており、症状や悩みも人それぞれ異なります。
「みんなも我慢している」「いつものことだから…」と考えず、早めに婦人科へご相談ください。

厚生労働省が運営する「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」では、病気のセルフチェックや病院検索ができます。

監修:丸の内の森レディースクリニック 院長/医学博士 宋 美玄(そん みひょん)

モデル体型に憧れてダイエットをしています

モデルのような細い体になりたくてダイエットをしています。仕事が忙しくて運動する時間がないので、食事制限をしています。ですが、最近は集中力がなくなったり、貧血になったりすることが増えました。ここ数カ月は月経も来ていません…。
(20代・女性)

日本の若い女性は5人に1人がやせすぎ

若い世代の女性では「やせているほうがいい」という意識が強い傾向にあり、日本人の20代女性のやせ(BMI18.5未満)割合は20.7%で中長期的に増加しています。国際的にみても、日本は先進国のなかでとくにやせ割合が高く、必要なエネルギーや栄養が不足していることがわかっています(下図参照)。
運動せず食事の量を減らせば体重は減るかもしれません。しかし、極端なダイエットや偏った食生活はさまざまな健康問題を引き起こすのでやめましょう。
※BMI=体重kg÷(身長m)2

  • 「少食で運動不足」の女性は糖尿病リスクが高い

    「少食で運動不足」のやせている若い女性は、肥満の女性と同じように糖尿病の発症リスクが高いことがわかっています。順天堂大学が行った研究では、標準体重に比べてやせ型の女性では耐糖能異常の割合が約7倍高く、さらには米国の同世代の肥満者よりも高い数値となりました。やせ型女性の特徴として、エネルギー摂取量や身体活動量が少ないことで、筋肉の量と質が低下していることも明らかになりました。

  • 将来の自分や子どもにも大きな影響が

    やせすぎや低栄養は、月経不順や無月経になり不妊を招いたり、生まれる子どもが低出生体重児(2,500g以下)になったりするリスクが高まります。低出生体重児は成長後に生活習慣病を発症しやすいなど、将来生まれてくる子どもの健康にも影響することがわかっています。妊娠を希望する人にとっては、ご自身の適正体重をキープすることが、将来の家族の健康を守ることにつながります。
    また、妊娠を望んでいない人でも、将来的にご自身の健康に大きな影響があります。やせすぎは骨粗しょう症やサルコペニアになりやすく、年を重ねてから寝たきりや要介護状態に陥るリスクが高まります。

  • すべての人が知っておきたいプレコンセプションケア

    プレコンセプションケアとは「妊娠前の健康管理」という意味で、世界保健機関(WHO)は2012年に「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義しています。女性自身はもちろん、女性を支える家族やパートナーもぜひ知っておきたい概念です。
    プレコンセプションケアは、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠可能年齢のすべての女性に必要なことです。したがって、妊娠する・しないにかかわらず、生涯にわたって質の高い生活を送るためにも下記の生活習慣を実践しましょう。
    【プレコンセプションケアにつながる生活習慣】
    適正体重をキープする
    栄養バランスを整える
    適度に運動する
    禁煙する・受動喫煙を避ける
    アルコールは控えめに
    ストレスをため込まない
    健診や女性特有のがん検診を受ける

監修:国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター 母性内科医長 荒田 尚子

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